訪問看護師の給料は高い？年収・手取り・手当の内訳を詳しく解説

訪問看護師への転職を考える中で、「実際にどのくらいの給料がもらえるのか」「病院勤務と比べて収入面でメリットはあるのか」と気になっている看護師の方も多いのではないでしょうか。夜勤なしでワークライフバランスを重視した働き方を希望しても、生活を維持できる十分な収入が得られるか不安に感じるのは当然のことです。

給与に関する正確な情報を把握せずに転職を決めてしまうと、「思っていたより給料が低かった」「手当の仕組みが複雑で実際の手取りが分からなかった」といった後悔につながる可能性があります。また、職場によって給与体系が大きく異なるため、適切な情報収集なしには理想的な収入を得られる職場を見つけることは困難です。

本記事では、訪問看護師の平均年収から基本給・各種手当・賞与の詳細な内訳、病院勤務との比較まで、収入面について包括的に解説いたします。地域差や経験年数による違い、給与アップのポイントについても詳しくお伝えします。

訪問看護師の平均年収・月収はどのくらい？

平均年収は440万円～543万円

訪問看護師の平均年収について、複数の調査データを総合すると440万円～543万円の範囲となっています。厚生労働省の調査によれば、訪問看護師の平均給与は約45万円、年収換算で543万円となっており、看護系求人サイトの調査では平均年収440万円というデータもあります。

この年収水準は、全国の給与所得者平均（約436万円）を上回る水準にあり、看護師として安定した収入を期待できることを示しています。ただし、勤務地域や経験年数、事業所の規模によって大きな差があることも理解しておく必要があります。

都市部では年収600万円を超えるケースも珍しくなく、特に東京や大阪などの大都市圏では高収入が期待できます。一方で地方では300万円台後半からスタートするケースもあるため、転職を検討する際は地域差も考慮することが重要です。

月収・手取りの目安と内訳

訪問看護師の月収は、基本給に各種手当を加えた形で構成されています。日本看護協会の調査データによると、平均税込み給与総額は約37万円となっており、手取りでは28万円～29万円程度になります。

月収の内訳は以下のような構成となっています。基本給が25万円～30万円程度で、これに訪問手当やオンコール手当などの各種手当が5万円～10万円程度加算される形が一般的です。手当の占める割合が高いことが、訪問看護師の給与体系の大きな特徴といえます。

手取り額については、健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料、所得税、住民税などが控除されるため、総支給額の約75％～80％程度になります。40歳以上の方は介護保険料も加わるため、若干手取り率が下がることも覚えておきましょう。賞与を含めて年収で考える場合、手取りベースでは350万円～430万円程度が目安となります。

地域による給与格差の実態

訪問看護師の給与には、勤務地域による大きな格差が存在します。実際の給与明細データを見ると、同じ経験年数でも地域によって年収に100万円以上の差が生じるケースも珍しくありません。

都市部では、東京都で年収600万円～700万円、大阪府で年収400万円～500万円の求人が多く見られます。これは高い生活費や人材確保の競争激化が背景にあります。特に東京23区内では、オンコール対応込みで年収600万円を超える事業所も多数存在します。

一方、地方部では年収350万円～450万円程度が相場となっています。鹿児島県の事例では年収340万円台のケースもあり、都市部との格差は明確です。ただし地方では生活費が低いため、手取り収入と生活水準のバランスを考慮して判断することが重要です。

給与格差の要因として、人口密度、訪問看護ステーション数、利用者数の違いが挙げられます。都市部では効率的な訪問が可能で収益性が高く、その分職員への還元も期待できるという構造があります。

訪問看護師の給与体系と各種手当の詳細

基本給と給与体系の特徴

訪問看護師の基本給は、勤務する事業所の規模や地域、看護師の経験年数などによって大きく異なります。一般的には月給25万円～40万円程度が多く、年収ベースでは300万円～480万円前後となります。

基本給の特徴として、病院勤務の看護師と比較して基本給の比重が低く、各種手当の比重が高いという点が挙げられます。これは訪問看護師の業務特性を反映した給与体系で、基本給に対して手当が占める割合は20％～40％程度になることも珍しくありません。

経験者に対する優遇も特徴の一つです。訪問看護経験がある看護師には初任給で30万円以上が提示されることもあり、経験やスキルが直接基本給に反映されやすい職種といえます。また、基本給は賞与や社会保険料の算定基準にもなるため、収入全体の土台となる重要な要素です。

さらに、多くの事業所で成果連動型の給与体系を採用しており、定期昇給に加えて業績に応じた昇給制度を設けているところも増えています。これにより、努力と成果が給与に直結しやすい環境が整っています。

訪問看護師特有の手当一覧

訪問看護師には、業務の特性に応じた様々な手当が支給されます。これらの手当が収入を押し上げる重要な要素となっています。

オンコール手当は、夜間や休日の緊急対応に備えて待機する時間に対して支給される手当です。相場は1回あたり1,000円～3,000円程度で、月に4回～8回程度の担当が一般的です。月額では12,000円～24,000円程度の収入増が期待できます。

緊急訪問手当は、実際にオンコール対応で利用者宅を訪問した場合に支給されます。1回あたり2,000円～5,000円程度が相場で、深夜帯ほど高額に設定されている事業所が多いです。

訪問手当・インセンティブ手当は、月間の訪問件数に応じて支給される成果連動型の手当です。例えば、月80件を超える訪問を行った場合、1件あたり1,000円の追加報酬が得られる制度などがあります。積極的に業務に取り組むことで、月に数万円の収入アップも可能です。

その他の手当として、資格手当（認定看護師で月5,000円～10,000円）、役職手当（管理者・教育担当者）、通勤手当、住宅手当なども支給される場合があります。

賞与（ボーナス）の支給状況

訪問看護師の賞与は、事業所の経営状況やスタッフ個人の業績に応じて支給されることが一般的です。賞与制度を導入している事業所では、年1回～2回の支給が多く見られ、支給額は基本給の1ヶ月～2ヶ月分程度が相場となっています。

賞与の算定基準として、訪問件数、在籍年数、貢献度、利用者満足度などが評価に反映されるケースが多いです。明確な評価制度を設けている事業所では、スタッフのモチベーション向上と定着率の改善につながっています。

支給時期は、多くの事業所で6月と12月の年2回に設定されており、安定した支給スケジュールによってスタッフの収入見通しが立てやすくなっています。一方で、経営状況によっては支給額が変動したり、業績不振時には支給されない可能性もあるため、転職時には賞与制度の安定性についても確認しておくことが重要です。

近年では、業績連動型の賞与制度を導入する事業所も増えており、個人の成果や事業所全体の売上向上が直接賞与額に反映される仕組みを採用しているところもあります。このような制度では、努力と成果が報酬として還元されやすく、やりがいを感じながら働くことができます。

病院勤務の看護師との給与比較

年収・月収の比較データ

病院勤務の看護師と訪問看護師の収入を比較すると、年収面では病院勤務の看護師の方がやや高い水準にあります。厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」によると、看護師全体の平均年収は約508万円となっており、訪問看護師の440万円～543万円と比較すると、病院勤務を含む看護師全体の方が高い数値を示しています。

月収で比較すると、病院勤務の看護師は平均約35万円、訪問看護師は約37万円となっており、月収ベースでは訪問看護師の方がわずかに高い水準にあります。これは訪問看護師特有の各種手当が充実していることが要因として挙げられます。

ただし、この比較には重要な注意点があります。病院勤務の看護師の収入には夜勤手当が大きく含まれているのに対し、訪問看護師はオンコール手当はあるものの、基本的に夜勤がありません。そのため、単純な数値比較だけでは実際の待遇差を正確に判断することは困難です。

また、病院勤務では夜勤による体力的負担や不規則な生活リズム、残業の多さなども考慮する必要があり、収入と働きやすさのバランスを総合的に評価することが重要です。

時給換算で見る実際の収入差

時給換算で比較すると、訪問看護師と病院勤務の看護師の収入差はより明確になります。訪問看護師は基本的に定時勤務で残業が少なく、夜勤もほとんどないため、実働時間あたりの時給は高くなる傾向にあります。

病院勤務の看護師の場合、夜勤や残業を含めた実働時間で時給を計算すると、月収35万円でも時給換算では1,500円～1,800円程度になることが多いです。一方、訪問看護師は月収37万円を実働170時間程度で割ると、時給2,100円～2,200円程度となります。

この差は、訪問看護師の労働時間の効率性を示しており、同じ時間働いても訪問看護師の方が高い収入を得られる可能性があることを意味します。特に家庭との両立を重視する看護師にとって、時給の高さは大きなメリットといえるでしょう。

パートタイムで働く場合の時給を比較すると、この差はさらに顕著になります。訪問看護師のパート時給は1,500円～2,000円が相場で、中には3,000円～4,000円の高時給求人もあります。病院でのパート勤務と比べて、明らかに高い水準にあります。

ワークライフバランスを含めた総合的な待遇比較

収入面だけでなく、ワークライフバランスを含めた総合的な待遇を比較すると、訪問看護師には多くのメリットがあります。最も大きな違いは、規則正しい勤務時間と夜勤の少なさです。

訪問看護師は基本的に日中の勤務（9:00～18:00程度）で、夜勤はオンコール対応のみとなります。これにより、家族との時間を大切にしながら働くことが可能で、子育て中の看護師にとって理想的な働き方を実現できます。病院勤務では避けられない夜勤による体力的・精神的負担がほとんどないのは大きなメリットです。

休日取得についても、訪問看護師の方が有利な傾向にあります。多くの事業所で土日祝休みを基本としており、年間休日120日以上の職場も珍しくありません。病院勤務では土日勤務が当たり前の中、この違いは生活の質に大きく影響します。

職場環境の面では、訪問看護師は利用者宅での1対1の看護が中心となるため、職場の人間関係によるストレスが比較的少ないとされています。また、利用者や家族との距離が近く、感謝を直接感じられることで、やりがいを実感しやすい環境にあります。

訪問看護師の給料をアップさせる方法

経験・スキルアップによる昇給

訪問看護師として給料アップを目指すには、経験の蓄積とスキルアップが最も確実な方法です。多くの事業所では経験年数に応じた定期昇給制度を設けており、着実な収入向上が期待できます。

認定看護師や専門看護師などの資格取得は、給与アップに直結する有効な手段です。認定看護師の場合、月額5,000円～10,000円の資格手当が支給される事業所が多く、年収で6万円～12万円のアップが見込めます。在宅看護、感染管理、緩和ケアなど、訪問看護に関連の深い分野での資格取得が特に評価されます。

管理職へのキャリアアップも大幅な収入増につながります。主任看護師で月額2万円～3万円、管理者になると月額5万円～10万円程度の役職手当が支給されることが一般的です。管理者の場合、基本給自体も上がることが多く、年収500万円～600万円以上も十分に可能です。

また、訪問看護の専門性を高めることで、より条件の良い事業所への転職も可能になります。経験豊富な訪問看護師は引く手あまたの状況にあり、自身の市場価値を高めることで給与交渉も有利に進められます。

高収入が期待できる職場の選び方

高収入を目指すには、事業所選びが極めて重要です。同じ訪問看護師でも、職場によって年収に100万円以上の差が生じることも珍しくありません。

地域選択が最も大きな要因です。東京都内、特に23区内では年収600万円～700万円の求人も多数あります。神奈川県、大阪府、愛知県なども高収入が期待できる地域です。人口密度が高く、効率的な訪問ができる地域ほど収益性が高く、職員への還元も期待できます。

事業所の規模と経営状況も重要な判断材料です。大手企業が運営する事業所や、複数の事業所を展開している法人は、給与体系が整備されており、昇給制度や福利厚生も充実している傾向にあります。一方、小規模でも収益性の高い事業所では、成果に応じた高い報酬を得られる可能性があります。

手当制度の充実度を確認することも大切です。オンコール手当の金額、緊急訪問手当の設定、インセンティブ制度の有無など、基本給以外の収入源が豊富な事業所を選ぶことで、総収入を大幅にアップできます。面接時には手当の詳細について積極的に質問し、実際の手取り額をシミュレーションしてもらうことをお勧めします。

副業・兼業による収入増加の可能性

訪問看護師は勤務時間が規則的で残業が少ないため、副業や兼業による収入増加を図りやすい職種です。多くの事業所で副業を認める傾向にあり、効率的に収入をアップする方法として注目されています。

他の訪問看護ステーションでの兼業は、最も一般的な副業形態です。平日はメインの職場で勤務し、休日に別の事業所で働くパターンが多く、時給2,000円～3,000円で月に5万円～10万円程度の追加収入を得ることができます。

オンコール専門スタッフとして複数の事業所と契約する方法もあります。オンコール待機のみの副業で、1回2,000円～3,000円の手当を複数の事業所から受け取ることで、月に2万円～5万円程度の収入増が可能です。

看護師向けの単発派遣も人気の副業です。健康診断の補助、イベント救護、訪問入浴の看護師など、土日や休日を活用して働くことができます。時給は2,000円～4,000円程度で、月に数回働くだけでも相応の収入になります。

ただし、副業を行う場合は、本業の事業所の就業規則を確認し、必要に応じて届出を行うことが重要です。また、確定申告が必要になる場合もあるため、税務面の準備も忘れずに行いましょう。

まとめ

訪問看護師の平均年収は440万円～543万円程度で、病院勤務の看護師と比べて決して低くない水準にあります。基本給に加えてオンコール手当、緊急訪問手当、訪問件数に応じたインセンティブなど、訪問看護師特有の手当が充実していることが特徴です。

夜勤がほとんどなく、残業も少ないことを考慮すると、時給換算では病院勤務を上回る場合も多く、ワークライフバランスを重視しながら安定した収入を得ることができます。また、高齢化社会の進行により訪問看護の需要は今後も増加が見込まれ、給与水準のさらなる向上も期待できます。

給料アップを目指すには、経験やスキルを積み重ね、認定看護師などの資格取得、管理者へのキャリアアップ、高収入が期待できる事業所の選択などが効果的です。地域差もあるため、都市部での勤務を検討することも一つの方法です。

訪問看護師として充実したキャリアを築きたい方は、転職活動での職場選びのポイントや具体的な転職方法について、関連記事もご参照ください。給与や待遇についてご不明な点がございましたら、お気軽にお問い合わせください。