訪問看護

訪問看護ステーションの立ち上げ完全ガイド|開業手順・資金・基準を徹底解説

訪問看護ステーションの立ち上げ完全ガイド|開業手順・資金・基準を徹底解説
管理者


「看護師として独立して、自分らしい訪問看護事業を立ち上げたいけれど、どこから手をつければよいか分からない」「開業に必要な資金や手続きが複雑で、失敗したくない」とお悩みではありませんか。

多くの看護師が病院での働き方に限界を感じ、地域に根ざした訪問看護事業への関心を高めています。しかし、訪問看護ステーションの立ち上げには法人設立、人員確保、指定申請など多くの準備が必要で、何から始めればよいか戸惑う方も少なくありません。

準備不足のまま開業を進めると、指定申請が通らなかったり、想定以上の初期費用がかかったり、利用者獲得に苦労したりするリスクがあります。また、運営基準を理解せずに事業を始めると、指定取り消しという最悪のケースも考えられます。

この記事では、訪問看護ステーションの立ち上げに必要な手順から初期費用、人員・設備基準、成功のポイントまで、開業を検討する看護師が知っておくべき情報を体系的に解説します。この記事を読むことで、確実で効率的な開業計画を立て、地域に貢献できる持続可能な訪問看護事業を実現することができます。

訪問看護ステーションとは?基礎知識と市場動向

訪問看護ステーションの定義と役割

訪問看護ステーションとは、利用者が住み慣れた自宅で自立した日常生活を送れるように、看護師等が利用者の自宅を訪問し、療養上の世話や診療の補助を提供する事業所のことです。厚生労働省では訪問看護を「疾病又は負傷により居宅において継続して療養を受ける状態にある者に対し、その者の居宅において看護師等が行う療養上の世話又は必要な診療の補助」と定義しています。

訪問看護ステーションの主な役割は、利用者の状態に合わせて食事・排泄・清潔の管理・援助、ターミナルケア、褥瘡の処置、カテーテル管理、リハビリテーション、家族支援などを行うことです。単に利用者本人への医療ケアを提供するだけでなく、家族への技術指導やメンタルケアを実施し、利用者本人だけでなく家族全体の負担軽減も重要な役割となっています。

訪問看護の市場規模と将来性

訪問看護の市場は急速に拡大しており、非常に将来性の高い事業分野です。全国訪問看護事業協会の調査結果によれば、2024年時点で訪問看護ステーション数は全国に17,329か所存在し、年々増加傾向にあります。また、介護保険利用者数と医療保険利用者数は合計で71万人に達し、こちらも継続的な増加を見せています。

特に注目すべきは今後の市場予測です。高齢者人口のピークは2040年頃と予測されており、団塊ジュニア世代の高齢化が進行するため、2040年代に入ると訪問看護の利用者数はさらに大幅に増加すると見込まれています。このため、訪問看護ステーションの数も利用者数に比例して増加する可能性が高く、今後20年間は安定した成長が期待できる市場環境にあります。

他の訪問サービスとの違いと特徴

訪問看護ステーションは他の訪問サービスと比較して、医療的ケアを提供できる点が最大の特徴です。訪問介護は生活支援が中心となるのに対し、訪問看護では看護師・保健師・理学療法士などの医療従事者が医師の指示の下で医療処置を行うことができます。また、介護保険と医療保険の両方を利用できる特殊な業態でもあります。

訪問看護と似たサービスに在宅看護がありますが、在宅看護は専門の医療従事者が利用者の自宅に訪問するのに対し、訪問看護は看護師・保健師・理学療法士など、さまざまな医療従事者が派遣される点で違いがあります。また、訪問看護ステーションは利用者の状態に応じて24時間365日の緊急時対応も可能で、他の訪問サービスでは対応できない重度な医療ケアにも対応できる体制を整えています。

訪問看護ステーション立ち上げの全体手順と準備期間

開業までの11ステップと所要期間

訪問看護ステーションの立ち上げは、①開設の目的・方針決定、②法人設立、③市町村・都道府県への事前協議、④開設資金確保、⑤事業計画立案・事業所設置・備品準備・職員確保、⑥書類整備、⑦賠償責任保険加入、⑧指定申請、⑨加算等体制届出、⑩業務管理体制届出、⑪事業開始の11ステップで進行します。

全体の所要期間は通常6ヶ月から1年程度を見込んでおく必要があります。特に指定申請については、都道府県等によって申請期限が異なり、指定権者によっては事前協議を求められることもあり、その場合は半年程度の期間が必要です。また、指定申請が承認されるまでには通常1ヶ月から2ヶ月かかるため、開業希望時期から逆算して余裕を持ったスケジュールを組むことが重要です。

各ステップでの注意点として、法人設立と並行して人員確保を進める必要があることが挙げられます。指定申請時には既に人員基準を満たしている必要があるため、採用活動は早期から開始し、適切な人材を確保しておくことが成功の鍵となります。

事前準備で重要な市場調査と事業計画

事業計画の作成前に実施すべき市場調査では、開設する地域の特性、既存の訪問看護ステーション数、病院や診療所等の医療機関数、福祉サービスの供給量などを詳細に調査します。これらの情報をもとに、事業所開設後の利用者見込み数や提供すべき訪問看護サービスの内容と必要度、連携先などを把握することが重要です。

事業計画書には、訪問看護ステーションを開設する意義、理念、対象者像、提供するサービス内容や方法を明文化するとともに、設備整備計画、人員計画、資金計画、サービス計画等を単年度計画と3~5年の中長期経営計画として策定します。特に収支シミュレーションでは、人件費130万円/月、賃料10万円/月、車両費・駐車場代12万円/月を目安として、月300件の訪問で260万円/月の収入を見込み、月79万円の利益を確保できる計画を立てることが一般的です。

競合分析も重要な要素で、既存の訪問看護ステーションのサービス内容、料金体系、スタッフ体制を分析し、差別化できるポイントを明確にすることで、安定した利用者獲得につなげることができます。

指定申請から開業までのスケジュール管理

指定申請のスケジュール管理では、まず指定権者(都道府県または指定都市・中核市)の申請締切日と審査期間を確認することから始めます。多くの地域では月1回の申請受付となっており、締切日に間に合わなければ翌月まで待つ必要があるため、余裕を持った準備が必要です。

申請に必要な主要書類には、指定申請書、事業所の指定に係る記載事項、登記簿謄本、従業者の勤務体制・勤務形態一覧表、資格証の写し、事業所の平面図・写真、運営規程、苦情対応体制書類、誓約書、介護給付費算定体制届出書などがあります。これらの書類準備には1ヶ月程度を要するため、申請締切日から逆算して早期に着手する必要があります。

指定通知後は速やかに事業開始準備を進めますが、この期間も利用者確保のための営業活動を積極的に行います。地域の医療機関や居宅介護支援事業所への挨拶回り、パンフレット配布、ホームページ開設などを通じて、事業開始と同時に利用者を受け入れられる体制を整えることが経営の安定化につながります。

立ち上げに必要な初期費用と資金調達方法

初期費用の内訳と相場(500万円〜1,000万円)

訪問看護ステーションの立ち上げに必要な初期費用は、全体で500万円から1,000万円程度が相場となっています。費用の内訳は、①法人設立費用(株式会社約25万円、合同会社約10万円)、②不動産契約料等(月賃料10万円の物件で約50万円~70万円)、③設備・備品・消耗品費(50万円~100万円)、④立ち上げ初期の人件費(50万円~100万円)、⑤広告宣伝費(30万円~50万円)、⑥運転資金(200万円~300万円)となります。

設備・備品については、相談用応接セット、事務机・椅子、パソコン・タブレット、プリンター・コピー機、電話・FAX設備、鍵付き書庫、ロッカー、文具等事務消耗品、感染対策用品などが必要です。また、訪問時に必要な備品として、バイタルサイン測定セット(体温計・血圧計・聴診器など)、防水用品、ディスポ用品、消毒・手洗い用品、褥瘡用具や医療処置物品なども準備する必要があります。

事務所については、事業運営に必要な広さがあること、利用申込の受付・相談等に対応するのに適切なスペースがあることが基準として定められていますが、地域によっては独自基準(事務室は○㎡以上など)を設けている場合もあるため、事前に指定権者に確認することが重要です。

運転資金の確保と資金繰り計画

訪問看護ステーションの運転資金で特に注意が必要なのは、サービス提供開始から収入入金までに約2~3ヵ月の期間があることです。介護報酬と診療報酬はどちらも、サービス提供後に保険給付費が入金されるまでにタイムラグがあるため、開設から3ヵ月分の経費を支払うための資金を確保しておく必要があります。

月次の運転資金としては、人件費(給与・社会保険・福利厚生費等)が最大の支出項目となり、事務所賃料、車両費・駐車場代、広告宣伝費、光熱費・水道代などが続きます。開設初月などは利用者数が少なく収入が限定的になるため、安定した利用者数を確保するまでの期間を想定して、200万円~300万円程度の運転資金を準備することが推奨されます。

資金繰り計画では、固定費と変動費を明確に分けて管理することが重要です。賃料や人件費などの固定費が増加すると資金繰りが圧迫されるため、サービス品質を左右する人件費や営業活動につながる広告宣伝費などとのバランスを適切にコントロールする必要があります。

融資・助成金・補助金の活用方法

資金調達方法として、融資では日本政策金融公庫の「新規開業資金」が最も活用しやすく、最大7,200万円(うち運転資金4,800万円)までの融資が可能です。審査には事業計画書や資金繰り表などの書類が必要で、審査期間は1~2カ月程度を見込んでおく必要があります。自己資金の確保、明確な事業計画、返済能力の証明が融資成功の重要なポイントです。

助成金については、業務改善助成金(上限30万円~600万円)、キャリアアップ助成金(正社員化コース57万円、賞与・退職金制度導入コース40万円~56.8万円)、働き方改革推進支援助成金(最大580万円~730万円)などが活用可能です。これらは人事改善や業務効率化を対象としているため、安定した経営実現に向けた取り組みと併せて申請することができます。

地方自治体が提供する訪問看護ステーション向けの補助金も資金調達に有効です。看護資格の取得支援や人材雇用などに対する補助制度があり、地域によって内容が異なるため、開業予定地の福祉局等に事前に問い合わせることをおすすめします。ただし、申請書類の作成や実績報告などの手続きが煩雑で、資金支給が事業開始後になる場合もあるため、計画的な資金繰りが求められます。

人員基準・設備基準・運営基準の詳細解説

人員基準:看護職員2.5人以上の配置要件

訪問看護ステーションの人員基準では、看護職員(保健師・助産師・看護師または准看護師)を常勤換算方法で2.5人以上配置することが義務付けられています。このうち最低1人は常勤である必要があり、管理者についても保健師、助産師または看護師の資格が必要です。准看護師は管理者にはなれないため注意が必要です。

常勤換算方法とは、常勤スタッフを1人として数え、非常勤スタッフは勤務延べ時間数を常勤の所定労働時間で割って計算する方法です。例えば、所定労働時間が40時間で非常勤スタッフの労働時間が12時間の場合、12時間÷40時間=0.3人として計算されます。このため、指定申請時点で最低3人以上(自身が看護師として働く場合は2人以上)の看護職員を採用しておく必要があります。

理学療法士・作業療法士・言語聴覚士については「実情に応じた適当数」の配置とされており、必須ではありませんが、リハビリテーションサービスを提供する場合は必要になります。また、保険請求や事務処理を行うための事務職員の雇用も実質的には重要であり、円滑な運営のためには早期に確保しておくことが推奨されます。

設備基準:事務所と必要備品の準備

設備基準では、事業運営を行うために必要な広さを有する専用の事務室と、訪問看護の提供に必要な設備・備品等の準備が求められています。事務所が単独の場合は専用の事務室が必要で、他の事業所等と併設する場合は専用の区画(区画の特定でも可)が必要です。いずれの場合も利用申込の受付、相談等に対応するのに適切なスペースを確保する必要があります。

指定権者によっては独自基準を設けている場合があり、例えば「事務室は○㎡以上」といった具体的な面積要件が定められていることもあります。また、個人情報保護の観点から、中が見えない鍵付きの書庫の設置が実質的に必要とされるケースが多いため、事前に確認しておくことが重要です。

訪問看護に必要な設備・備品については、バイタルサイン測定セット、防水用品、ディスポ用品、タブレットや文房具など記録用の機器・事務用品、消毒・手洗い用品、褥瘡用具や医療処置物品などを適切なサービス提供のために準備する必要があります。また、利用者宅への移動手段として車両も必要であり、駐車場の確保も含めて準備しておく必要があります。

運営基準:28項目の遵守事項と管理体制

訪問看護ステーションの運営基準には28項目の遵守事項が定められており、これらすべてを適切に実施する管理体制の構築が必要です。主要項目には、内容及び手続きの説明及び同意、提供拒否の禁止、サービス提供困難時の対応、受給資格等の確認、居宅介護支援事業者等との連携、サービス提供の記録、主治医との関係、訪問看護計画書・報告書の作成、緊急時等の対応、運営規程の策定、業務継続計画の策定等、衛生管理等、苦情処理、事故発生時の対応、虐待の防止などが含まれます。

特に重要なのは、訪問看護計画書及び訪問看護報告書の作成で、これらは利用者ごとに主治医の指示に基づいて作成し、サービス提供後は適切に報告する必要があります。また、業務継続計画(BCP)の策定は令和3年度から追加された項目で、令和6年3月31日まで努力義務とされていましたが、現在は必須項目となっています。

業務管理体制の整備も法的に義務付けられており、事業所数に応じて法令遵守責任者の選任(全事業所)、法令遵守マニュアルの整備(事業所数20以上)、法令遵守に係る監査(事業所数100以上)を実施する必要があります。これらの管理体制を適切に運用し、定期的に見直しを行うことで、法令違反による指定取り消しリスクを回避することができます。

法人設立から指定申請までの具体的手続き

法人設立と事務所契約の手続き

訪問看護ステーションを開設するためには法人格が必要であり、個人での開設はできません。新規に法人格を取得する場合、株式会社または合同会社を選択するのが一般的です。株式会社の設立費用は約25万円、合同会社は約10万円が目安となります。既に法人がある場合は、定款や寄付行為の変更を行い、訪問看護事業を法人内に登記する手続きが必要です。

法人設立手続きでは、法務局での商業・法人登記申請を行います。必要書類には登記申請書、定款、発起人の印鑑証明書、資本金の払込証明書、取締役の就任承諾書などがあり、手続きには通常2週間程度を要します。設立と並行して、事務所の契約も進める必要があります。

事務所契約については、訪問看護事業の運営基準を満たす物件を選定し、賃貸借契約を締結します。契約時には敷金・礼金・保証金に加えて前払い賃料・管理費などが必要で、月賃料10万円の物件で初期費用約50万円~70万円を見込んでおく必要があります。なお、個人で事務所を先に契約してから、その住所で法人設立を行うケースもあります。

指定申請に必要な書類と提出期限

訪問看護事業の指定申請では、介護保険法に基づく指定を受けることで、同時に健康保険法に基づく指定もみなし規定で受けることができます。指定申請に必要な主要書類には、指定居宅サービス事業所・指定介護予防サービス事業所指定申請書、訪問看護・介護予防訪問看護事業所の指定にかかわる記載事項、登記簿謄本、従業者の勤務体制及び勤務形態一覧表、就業規則の写し、資格証の写し、雇用契約書の写し、事業所の平面図、事業所の外観及び内部の様子がわかる写真、運営規程、苦情対応の体制がわかる書類、衛生管理体制がわかる書類、誓約書、介護給付費算定に係る体制等に関する届出書などがあります。

書類の様式や内容は指定権者によって微妙に異なる場合があるため、事前に確認が必要です。また、写真の提出だけではなく、職員による現地確認を行う自治体もあります。これらの書類準備には通常1ヶ月程度を要するため、指定申請締切日から逆算して早期に準備を開始することが重要です。

提出期限についても、指定権者によって異なりますが、多くの地域では月1回の申請受付となっており、締切日に間に合わなければ翌月まで待つ必要があります。開業予定日に間に合わせるためには、提出期限を事前に確認し、余裕を持ったスケジュールで準備を進める必要があります。

都道府県による審査と指定通知までの流れ

指定申請提出後、都道府県または指定都市・中核市による審査が開始されます。審査では、人員基準、設備基準、運営基準のすべてを満たしているかが詳細にチェックされます。書類審査に加えて、実地での確認が行われる場合もあり、事務所の状況、備品の準備状況、スタッフの配置状況などが確認されます。

審査期間は通常1ヶ月から2ヶ月程度ですが、書類に不備があった場合や追加資料の提出を求められた場合は、さらに期間が延びる可能性があります。このため、初回申請時には完璧な書類を準備し、指定権者からの質問や追加要求に迅速に対応できる体制を整えておくことが重要です。

指定が承認されると「指定通知書」が交付され、正式に事業を開始することができます。指定通知書受領後は、速やかに事業開始準備を進めるとともに、利用者確保のための営業活動を本格化させます。地域の医療機関、居宅介護支援事業所、地域包括支援センターなどへの挨拶回りを行い、パンフレットの配布、ホームページの開設、広告の掲載などを通じて、事業開始直後から安定した利用者を確保できる環境を整えることが経営成功の鍵となります。

立ち上げでよくある失敗と成功のポイント

人材確保と利用者獲得の課題

訪問看護ステーションの立ち上げで最も大きな課題となるのが人材確保です。全国的に看護師不足が深刻化しており、求人募集をしても応募がない、人員基準を満たせずに開業できない、開業後に離職により休止せざるを得なくなるといったケースが頻発しています。成功のポイントは、他のステーションとの差別化を図った魅力的な労働環境の提供です。

具体的には、夜勤なしの働き方、柔軟な勤務時間、充実した福利厚生、適正な給与水準、継続的な研修機会の提供、働きがいのある職場環境の構築などが重要です。また、採用活動は開業準備の早期段階から開始し、地域の看護師会や転職サイト、人材紹介会社などを活用して積極的に進める必要があります。

利用者獲得についても計画的な営業戦略が必要です。地域の医療機関、居宅介護支援事業所、地域包括支援センターとの連携強化を図り、互いに利用者情報を共有し適切なサービス提供体制を整えることが安定した利用者確保につながります。また、多職種との連携により訪問看護に留まらない包括的なサービス提供を実現することで、利用者からの信頼と満足度を高めることができます。

法令遵守と指定取り消しリスクの回避

訪問看護ステーションは運営・人員・設備基準が厳格に定められており、厚生労働省や都道府県から継続的に監督されています。法令違反や基準違反が発生すると、最悪の場合指定取り消しというリスクがあるため、常に基準を遵守する管理体制の構築が不可欠です。

特に注意すべき点は、人員基準の維持、運営基準28項目の継続的な遵守、適切な記録管理と報告書作成、業務継続計画(BCP)の策定と更新、衛生管理体制の維持、苦情対応と事故発生時の適切な処理などです。これらを確実に実施するためには、定期的な内部監査の実施、スタッフへの継続的な研修、最新の法令改正情報の収集と対応、専門家による定期的なチェックなどが有効です。

また、介護業界の法令制度は頻繁に変更されるため、常に最新情報を収集し、変更内容を適切に運営に反映させる体制を整えることが重要です。参照する資料の公開日に注意し、古い情報に基づいた運営を行わないよう注意が必要です。

経営安定化のための運営ノウハウ

経営安定化のためには、効率的な業務運営と適切なコスト管理が重要です。訪問看護の収支差率は5.9%と決して高くなく、人件費率は74.6%と非常に高い数値であるため、人件費と収益のバランスを適切にコントロールする必要があります。

業務効率化には介護ソフトなどのICT活用が効果的で、これまで人手で実施していた入力作業や情報共有を自動化できるほか、記入ミスや連携ミスを防止し管理データの信頼性を高めることができます。また、スタッフの移動時間短縮のための訪問ルート最適化、電子カルテ導入による記録業務の効率化、請求業務の自動化なども重要な取り組みです。

収益向上については、加算体制の整備が重要で、緊急時訪問看護加算、特別管理体制、ターミナルケア体制などの届出を行い、算定可能な加算を確実に取得することで収益を最大化できます。また、医療保険と介護保険の両方の収益チャネルを活用し、利用者の状態に応じて最適な保険を選択することも収益安定化につながります。定期的な収支分析を行い、収益性の高いサービスに重点を置いた事業運営を心がけることが長期的な経営安定につながります。

まとめ

訪問看護ステーションの立ち上げは、法人設立から指定申請まで多くの手続きと準備が必要な複雑なプロセスですが、適切な計画と準備により確実に実現できます。市場は今後も拡大が見込まれ、2040年代まで安定した成長が期待できる将来性の高い事業分野です。

成功の鍵となるのは、6ヶ月から1年間の十分な準備期間の確保、500万円から1,000万円の初期資金と運転資金の調達、人員基準2.5人以上の看護職員確保、運営基準28項目の遵守体制構築、そして地域医療機関との連携による利用者獲得戦略の実行です。

特に重要なのは事前の市場調査と綿密な事業計画の策定で、開業予定地域の競合状況や利用者ニーズを正確に把握し、差別化できるサービス内容と経営戦略を明確にすることが成功につながります。また、法令遵守と効率的な運営体制の構築により、持続可能で地域に貢献できる訪問看護事業を実現することができます。

この記事の情報を参考に、あなたも地域に根ざした訪問看護ステーションの立ち上げに挑戦し、利用者と家族に安心と安全を提供する意義深い事業を開始してください。

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